第75章

島宮雪乃からの電話に、島宮奈々未ははっと我に返った。

「わかった、すぐ行くわ」

 島宮奈々未の胸中は激しく高鳴り、同時に複雑な思いが渦巻いていた。あの男を見つけ出せば、もしかすると子供の行方もわかるかもしれない。

 だが、あの男と顔を合わせることを想像すると、やはり足がすくむのを感じた。

 五年前のあの出来事は、彼女の心の奥底に封じ込められた秘密だった。あの男に、乱暴されたのだ。

 あれから長い月日が流れたというのに、心の傷は未だ癒えていなかった。

「奈々未、どうしたの? 誰からの電話?」安島若菜は、島宮奈々未の顔色が優れないのを見て、心配そうに尋ねた。

「島宮雪乃よ」島宮奈々...

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